98回全国高校野球選手権大会でベスト8進出を決めている秀岳館(熊本)では、吹奏楽部が野球応援を優先するためコンテストを辞退していたそうです。
美談として語られた話ですが、中にはコンテストを目指していた生徒もいたようです。
問題として議論となっています。
経緯
報じられた内容は以下のようになっています。
秀岳館(熊本)が甲子園出場を決めたのが7/26日
- これは8月1日の「南九州小編成吹奏楽コンテスト」県予選1週間前だった
- コンテストは8月11日で、予選を通過した場合、甲子園の応援を優先すればコンテストに出られない
- コンテストか甲子園かで職員会議になる
- 多くの教員はコンテストに出るべきと主張
- 吹奏楽部3年生6人も話し合い「コンテストに出たい」と涙をながす部員も
- しかし吹奏楽部の演奏がなければチアリーディングもできず、応援が一つにならない
- 部長の樋口和希さんは目を真っ赤にし「野球部と一緒に演奏で日本一になります」と宣言
- 8月1日の県予選には上位入賞しても大会は辞退すると申し入れ出場し、金賞を受賞する
- 部員の田畑史也さんは「県予選で全力を出し切り吹っ切れた。」とスタンドでドラムを鳴らす
- 樋口「最高に気持ちが良い。僕達も全力で戦います。」
葛藤がありながらも最後は美談としてまとまっているようですが、「問題あり」と多くの意見が出ています。
問題点
問題点としてあげられているのは
- コンテストを目指して練習してきたはずなのに辞退していいのか
- コンテストに出たいと言った部員の当たり前の主張は尊重されないのか
- 甲子園の応援を優先するという考えが出てくる事自体がおかしい
- 職員会議として大事にしてしまったことが原因で、部員に無理な決断をさせてしまったのでは
- 「応援が一つにならない」は吹奏楽部よりも野球部を優先した表現である
- もしこれが野球部でなく他の部活の全国大会出場だったらどうなっていたか
など、かなり多くあります。
確かに、吹奏楽部は吹奏楽部として、コンテスト(九州ではコンクールよりもコンテストの呼称をすることが多いようです)の上位入賞や大舞台での演奏を目指して練習してきたはずです。
野球部が甲子園出場を決めたからといって、1週間前で目標が簡単に変わるはずありません。
まして、予選では金賞を取るほどの腕前です。
最近「ブラック部活」として取り上げられていた吹奏楽での成果です。
それだけ厳しい練習をしてきたのでしょう。
ただし、中にはこのコンテストは大きなコンテストではないので甲子園の応援を優先することも疑問はないという意見もあります。
南九州小編成吹奏楽コンテストとは
南九州小編成吹奏楽コンテストの概要は、以下のページ(PDF)で見られます。
概要は
- 中学生と高校生対象のコンテストで、南九州各県の吹奏楽連盟が主催
- 後援には甲子園高校野球と同様に朝日新聞社の名前も
- 出場権は、沖縄県吹奏楽コンクールAパートに25名以下で出場した団体で、中高各上位3団体
- Aパートとは自由曲に加え課題曲が課され、団体の人数が55名までのパート
- (他にBパートがあり、こちらは自由曲のみで団体人数は35人まで)
- 小編成は人数のことを指し、このコンテストでは25名以下
課題曲が課されれいるはずなので、やはり照準を合わせ練習をしてきてきたはずです。
確かに、実施要項にはこの後、西日本大会や全国大会につながるという記載はありません。
言いようによっては大きなコンテストなのかもしれません。
しかし、課題曲があり、予選とはいえ金賞を取るほどの練習をしてきました。
「吹っ切れた」というのは本当なのでしょうか。
違う学校ですが、高校生の吹奏楽小編成の演奏です。
小編成と明記はされていませんが、数えたところ人数は18名です。
やはり甲子園での応援の演奏とは全く違いますよね。
甲子園(野球)を優先する風潮
今回の秀岳館に限った話ではありませんが、以前から「野球の優遇」が問題とされています。
理由には甲子園が朝日新聞社の主催であることにもあるようです。
甲子園での試合は新聞で取り上げられ、テレビでの中継もされます。
伝統的な野球人気もあり、多くの人の目に触れるようになっています。
つまり、学校にとっては学校を宣伝する最高の場面です。
そんな場面で、応援の生徒が少なかったり、盛り上がっていなかったりしたら、学校はマイナスの印象を持たれてしまいます。
ある意味学校のために、野球応援はされているのですね。
現在は少子化の影響もあり、多くの学校では学校の先生が中学校や学習塾に入学者獲得のための営業に回ることもあるほどです。
それほどの状況では職員会議になるのもうなずけます。
しかし、それは状況がわかったというだけで、生徒が被害を受けている可能性がある状況には変わりはありません。
とは言え、生徒としても野球応援を優先しないことは難しいでしょう。
まずは吹奏楽が多くの楽器を必要とすることが挙げられます。
簡単に代わりがきくものではないので、コンテスト1週間前に誰か一人でも抜けたら、演奏は成り立たなくなってしまいます。
つまり、話し合いの中で意見は分かれてしまっていたとしても、どちらか一方に絞らなければなりませんでした。
そして、「演奏がなければチアリーディングもできず、応援が一つにならない」というのは、ある意味外部からの圧力を感じさせます。
吹奏楽では協調性も重要な要素です。
その方向での圧力もあったのかもしれません。
まとめ
今回の秀岳館のケースでは、吹奏楽部のコンテスト辞退が本当に美談なのか、疑問が残ります。
生徒からそう言ったとしても、口で「最高だ」と言っても、真実は分かりません。
不満があっても言わない生徒は多いはずです。
また他に方法はなかったのでしょうか。
学校によっては応援の演奏をOB、OGや地域の人にお願いをすることもあるようです。
吹奏楽部の部員が自分らでやると拒否したのでしょうか。
生徒個人の問題だけでなく、学校の問題や社会の問題も絡んできており、難しい問題になっています。
問題は解決していくとして、当事者となってしまった生徒たちには、本当に最高の応援にしてもらいたいです。