出典:http://www.sankei.com/photo/story/news/160822/sty1608220009-n1.html
リオ五輪最終日の21日に行われた男子マラソンで、銀メダルを獲得してエチオピアのフェイサ・リレサ選手がゴール前にとったポーズが政府への抗議だったことが報じられました。
リレサ選手自身の発言によると、エチオピア政府は強引な方法で土地や資源を奪い、リレサ選手の親族も違法に拘束されているということです。
また、帰国すれば投獄や、最悪の事態も考えられ、あのポーズはまさに命がけであったということです。
この抗議によりリレサ選手は今後どうなってしまうのでしょうか。
五輪の政治利用の禁止
61.宣伝と広告
1- オリンピック・エリアにおいては、いかなる種類のデモンストレーションも、いかなる種類の政治的、宗教的もしくは人種的な宣伝活動は認められない。(以下略)
このように、五輪では政治的な宣伝活動は禁止されています。
違反した場合には、失格や資格認定を取り消すこととなるようです。
具体的には1968年メキシコ五輪でブラックパワー・サリュート(黒人差別に対する抗議)がありました。
出典:http://www.theage.com.au/news/sport/man-of-honour/2006/10/10/1160246131511.html
陸上200m走の表彰式で、金メダリストのトミー・スミス選手と銅メダリストのジョン・カーロス選手(共にアメリカ代表)が拳を高く掲げています。
これがブラックパワー・サリュートのアピールです。
これに対して国際オリンピック委員会の対応は
- メダルの剥奪
- アメリカ代表から除名
- 五輪の選手村から追放
という、非常に厳しいものでした。
それだけ五輪の政治利用が問題視されるものであることが伺えます。
リレサ選手やエチオピア選手団の今後
リレサ選手自身はこれを発表したことで、更に帰国後の危険は増していることでしょう。
また国際オリンピック委員会によりメダルを剥奪される可能性も高まりました。
しかし、そもそもこの行動は帰国をしない(亡命する)ために取った行動とも言われています。
そしてリレサ選手自身も亡命を検討するというニュアンスの表現をしているようです。
命の危険がある状況です、そうなれば亡命が実現する可能性も高いでしょう。
エチオピア選手団はどうなる
エチオピアはスポーツ大国として有名であり、近代夏期五輪ではリオの獲得数も合わせて、これまで53個のメダルを獲得しています。
そして選手団も陸上を中心に38名が参加しました。
彼らの中にもリレサ選手と同じような境遇の選手もいるはずです。
しかし同時にエチオピア国内に親族を残してきているでしょう。
そうなれば、たとえ亡命をしたくとも、家族のために何事もなかったように帰国するしかない選手がほとんどなはずです。
逆に言えば亡命をちらつかせるリレサ選手は様々な覚悟をしていると言えます。
まとめ
- リオマラソン銀のリレサ選手のゴール前のアピールはエチオピア政府に対する抗議だった
- エチオピアに変えればリレサ選手は投獄や最悪の事態もあり得る
- 五輪では政治的な宣伝活動は禁止されている
- メダル剥奪と追放も過去にはある
- 多くのエチオピア選手団はそのまま帰国する可能性が高い
リレサ選手はエチオピアにもどったとして、もうできることがなかったのでしょうか。
この行動のためには自分の命の危険だけでなく、さまざまな覚悟が必要だと考えられます。
五輪といえども、どうしても政治的な出来事が起きてしまい、単純に応援しているだけでいいのか、考えさせられてしまいます。